不安や恐怖、恨みなどの負の感情って、簡単に人の心を埋め尽くしますよね。
そして、負の感情で埋め尽くされた精神状態では、物事を冷静に判断出来なかったりします。
皮膚科の外来にはよく
このできもの(しばしばほくろ)は癌なんじゃないか、と心配で受診される方がいます。
確率的には、ほとんどの場合、癌ではありません。
良性のできものであったり、ただのほくろであったりする場合が多い。
「診察した感じでは良性の出できものだと思いますよ。」
と説明したとします。
大体の方は安心して帰られたり、いくつか質問をしてこちらが説明すると納得されるのですが
時々
「100%癌じゃないと言い切れますか?」
と聞かれる事があります。
この場合、僕は正直に
「100%癌じゃないとは言い切れません。ただし99%以上の確率で癌ではないと思います。」
と答えます。
癌かどうか診断するには、その部分を手術して、顕微鏡で覗いてみる必要があります。
ここまですれば診断はつきます。
しかし本当にまれですけど、それでも時々グレーな時があります。
悪性ではないと思うが、良性とも言い切れない。。。
結論がつかない状態ですね。
それでも、専門家としてある程度アドバイスは出来ます。
典型的な悪性の所見でもない、手術で取り除けている、
この先、再発や転移の可能性は極めて低い
なので、定期的に外来を通院してもらえば、大きな病気となる事はなくフォローアップ出来るでしょう、という具合にね。
ここでうまく不安を取り除いてあげる事が出来ないと
「先生、念のため周りの正常な部分も含めてあらかじめ大きく手術でとったり出来ませんか?」
という、とんでもないリクエストが実際に出てしまう事がある。
こうやって考えていくと
全ての皮膚(臓器)は癌になる可能性があるので、手術でとってしまわなければならない
となってしまいます。
ここまで行き着くと本人も、ああ、おかしいな、と気づいたりするわけです。
医学は100%ではないので、絶対は存在しません。
そのため、あらゆる可能性は存在して、可能性だけは無限大です。
ただ、それはあくまでも可能性の話。
それが実際に起こるかどうかはまた別問題です。
本当にわずかしか存在しない可能性の為に、どこまで犠牲を払えるか?
不安で心が埋め尽くされている人は、ここの判断が冷静に出来ない場合が多い。
1万分の1の可能性の不安を解消する為に、あらゆる犠牲を払ってしまう。
それは「経皮毒」で言うところの
シャンプー、歯磨きを含む日常用品をすべてニューウェイズの商品に買い替える、ことであり
アトピーで言うところの
ステロイドをいっさい使わずに、アトピーの完治を目指す
ことと一緒です。
その1万分の1の可能性を信じてしまっているんですね。
例えば
「大気汚染で空気中には有害な物質が徐々に多く含まれるようになってきました。
こういう空気を吸い続けていると癌やアトピーの原因になります。
大変危険です。」
と説明を受けて、息を一生止め続ける人はいないはずです。
では
「この100万円する空気清浄機を利用しましょう。」
としたらどうでしょう?
何人かは買いそうですね。
でもあまり賢い選択ではないような気がします。
それは、
この病気が起きる確率に対して、100万円を支払うだけの価値(犠牲)があるかどうか考えてみると、どうもつり合っていないように思うからです。
次に、こんなのはどうでしょう?
「人間、笑うと免疫力が上がる事が知られています。
これは科学的には免疫を担当するNK細胞というものが笑う事によって活性化する為だと考えられています。
NK細胞は他の免疫細胞にも相互作用して、アトピー性皮膚炎で重要となってくるT細胞に働きかけます。
T細胞の活性化はアトピー性皮膚炎の悪化につながります。
このため、アトピーの患者さんはなるべく笑ってはいけません。
免疫のネットワークによって、笑うとアトピーは悪くなるからです。」
これは今、僕が持っている免疫の知識を用いて、勝手に作った理論です。
医学的になにも嘘をついていません。
そしてなにも隠していません。
もっともらしい説明だと思いますか???
これでアトピーの方は
ああ、明日から笑うのをやめて深刻な顔して生きていこう
と思いますか?
そんなの絶対おかしいですよね?
可能性だけで話をしていくと、「笑うとアトピーは悪くなる。」ことにもなるんです。
こういうのをデタラメって言うんです。
では最後にこんなのはどうでしょう?
「ステロイドは体に貯まる可能性があります。
いずれ効かなくなって、アトピーが大爆発する可能性があります。
なので、ステロイドは使ってはいけません。
アトピーを治したいのであれば、ステロイドはやめてください。
その為に仕事をやめざるを得ないのは仕方のない事です。」
ネット上でよく見かける説明ですね。
解りやすいように数字に直して考えてみましょうか?
ステロイドが体に貯まったという報告や、実験結果は今までありません。
世界中で使われているステロイドの量、期間など考えて、相当多く見積もって100分の1の確率でステロイドが貯まるとします。
次に、ステロイドが効かなくなってアトピーが大爆発する、
これはステロイドが効かなくなるかどうかはまだ結論が出ていません。
ただし、効かなくなると言ったきっちりとした報告もありません。
そこでこれも100分の1。
万が一、効かなくなるとしても、効果の100が0になることは考えづらい。
(まぁ、だいたいアトピー大爆発の実態のほとんどがカポジ水痘様発疹症という感染であり、高ウイルス剤を飲んだら治ったはずなんですけども。。。)
そこで大爆発の理由が、ステロイドが効かなくなったせいであるとする確率を100分の1。
今回の説明、全部あわせて考えると、
100万分の1の可能性で起こりうる危険性です。
まぁ、実際には副作用報告のほとんどが100人に1人のレベルではなく、もう1桁や2桁多いところで調査されているので
10億分の1くらいと言ってもいいんじゃないかな。。。
10億分の1の確率の為に、生活のすべてを犠牲にしますか?
不安に埋め尽くされて、冷静な判断が出来なくなった時、一番に損をするのは自分です。
可能性は無限大にあります。
でもそれはあくまでも可能性の話。
どれだけの確率で起こりえる事なのか?
それだけに見合う投資(犠牲)なのか?
ちょっと一歩引いて考えてみたら、案外冷静になれるかもしれません。
冷静になってみると
いろんな言葉が耳に入ってきますよ。
今まで無意識に遮断していた(自分の信じたものに反する)多くの情報が、目に入るようになると思います。
苦しさから抜け出すゴールは、もうすぐのところです。
今日は長くなりました。
最後まで怒らずに読めたあなたは、もうゴールが近いのかもしれませんね。
頑張ってください。
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