妊娠線予防クリーム
「妊娠線を予防したいんですけど。。。」
と、外来で聞かれることがたまにある。
話を聞いてみると、妊娠線予防クリームを使っている妊婦さんがとても多い。
しかも高い(らしい)。
妊娠線が出来ないようにするためなら、多少高額な化粧品の出費もやむを得ない気持ちは男性の僕にも解る。
でも、ほんとうに効果があるのだろうか。
と考えてしまった。。。(いつもの悪い癖で。)
「妊娠線」は正しい病名ではなく、「線状皮膚萎縮症」と言うのが正しい。
幅数ミリで数センチの長さに伸び、それぞれはほぼ平行に走る線で、わずかに陥凹しているのが特徴。
妊娠線が有名だが、男性でも急激に太った場合はお腹に限らず「線状皮膚萎縮症」は出現する。
一般に、急激な皮膚の進展により避けてしまうのが原因と考えられている。
と、まぁ難しい説明はここまでとして
治療については皮膚科の教科書にはなんて書いてあるのだろうか。
皮膚科分野でもっとも一般的な教科書「マイナー皮膚科学(マイナーと書いておきながら800ページくらいあるほとんど辞書みたいなもの)」によると
「非可逆的で、よい治療法もない。」
非可逆的というのは、もとに戻らない、という意味。
つまり1回出来たら戻らないよ、ってこと。
むむむ。。。
諦めずにもう一冊、これまた皮膚科の一般的な教科書「皮膚病アトラス」によると
「一度発生したものは非可逆的で治療法はない。」
同じだわ(涙)。
教科書というのは、間違ったことをなるべく書かないように作られていて、しかもその時の一般的な医学知識を載せていることが多い。
つまり、現在の医学の一般的な知識として、妊娠線の予防と治療について効果のあるものはない、ということ。
教科書に比べ論文というのは最新の知見を載せていることが多い(発表した次の年に間違っていました、なんてこともあるから教科書に比べ信用度は低い)。
そこで論文では何かないかと、全国の医学系雑誌が検索出来る「医中誌」という検索サイトで調べてみた。
「線状皮膚萎縮症線 治療」と入力しenter
。。。
該当0
条件を甘くして
「線状皮膚萎縮症」だけで入力してみたが4件ヒットしたものの、内容は関係ないものばかりでした。。。
さらに、医学用語ではないけれども「妊娠線」で検索してみると多少論文はヒットしたが、掲載している雑誌が皮膚科の専門誌でないものばかり。。。
どうも科学的に根拠のありそうな治療法はないというのが結論。
では切り口を変えてみて、妊娠線予防クリームと呼ばれるものはなにを持って妊娠線予防クリームを謳っているのだろうか。。。
主なものは
日本ランウエル、ピジョン、ポーラ、クラランスなどからボディケアミルク、もしくはマッサージクリームの名前で販売されているものがほとんど。
成分としては、セラミド、コラーゲン、ビタミンを中心にそれぞれ天然のなんとかエキスを混ぜたものが多い。。。
いくつか全成分を載せているクリームがあったので、こんな見方をしてみた。
「成分だけを見て、このクリームがなんの薬だと思うだろうか。。。」
。。。
答えは、保湿剤。
そう、これら妊娠予防クリームと呼ばれているものは、ほとんどが保湿剤。
今後、なんとか抽出成分が妊娠線予防に効果があるという大発見がない限り、保湿剤と呼ぶのが正しいだろう。
更に考えてみた。
妊娠線予防クリームが保湿剤なら、妊娠線予防には保湿が効果あるのだろうか。
これについては唯一発見出来た本当っぽい説明は
「肌が乾燥していると湿疹がおきやすく、皮膚にダメージを受けやすい。そのため、保湿をすることでこれらのダメージは予防出来、妊娠線が出来やすくするのを防ぐ。」
というもの。
そりゃ、湿疹出来ない方が肌にダメージは少ないけど、妊娠線の直接の予防ではないやん。
百歩譲って、保湿が妊娠線予防に効果があるとして、普通に市販されている(病院でもらえる)保湿剤では駄目なんだろうか。。。
と、夢も希望もない話になってしまいそうなので、ここまで調べてみて
「妊娠線を予防したいんですけど。。。」
という患者さんが来たら、なんとアドバイスをするか。
僕なら
「急激に太らないようにしてくださいね。」
って言います。
妊娠線予防クリームは積極的には勧めないし(やめさせることはしません。クリームを塗ることでリラックス出来るんならリラックス効果はあると思うので)、保湿剤も全員に処方しないと思う。
つわりが終わって食欲が出始めた時期に、急激な体重増加がないように指導します。
なーんだ、って思うかもしれない。
でも、こういう薬を使わない生活指導って医療をするうえですごく大事なんだよね。
こういうことを調べたり考えたりしていて、皆さんに知ってもらいたいな、って思うこと。
「病気の治療や予防効果は、お金をかけることに比例しない。」
今日は少し長くなりました。
最後まで読んでくれてありがとう。
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