カテゴリー「薬の知識」の11件の記事

インペアード・パフォーマンス

かゆみ止めを飲むと眠くなることってありません?

一般的に使われているかゆみ止めは、抗ヒスタミン薬というものです。

ヒスタミンとはかゆみ物質。

くしゃみ、鼻水、目のかゆみの原因になるものです。

このヒスタミン。アレルギーに関係するだけじゃなくて神経にも影響するんです。

つまり睡眠、学習、食事なんかを調整する働きもあるんです。

そのため、抗ヒスタミン薬であるかゆみ止めは、アレルギーを抑える働きをするのと同時に、眠くなったりしちゃうんですね。

眠気って自覚しやすい症状ですが、

この抗ヒスタミン薬は他にも影響があります。

皮膚科医の間では、インペアード・パフォーマンス(集中力、判断力、作業効率の低下)が最近注目されています。

抗ヒスタミン薬を飲んで車を運転するとブレーキを踏むタイミングが遅れる。。。

子供の学習能力が下がる。。。

ものによってはウイスキー3杯分に相当する判断力の低下が見られるなんて報告もあります。

アメリカでは抗ヒスタミン薬を飲んで車を運転することは規制されています。

抗ヒスタミン薬も

飲んだら乗るな、なんですね。

もちろん、最近の薬はこのインペアード・パフォーマンスが起きないかゆみ止めも出ています。

アレグラ、クラリチンがそうです。

これらのお薬は飲んでも、眠気は出ないし判断力は下がらないと言われています。

最近、市販で変えるお薬でも抗アレルギー薬が多く出ています。

これらのほとんどがインペアード・パフォーマンスを引き起こすものです。

花粉症のこの季節

アレルギーのお薬を飲む方も多いと思いますが

飲んだら乗るな、

は、アレルギーのお薬も一緒ですよ。

気をつけて下さいね

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小柴胡湯(しょうさいことう)

東洋医学と西洋医学は

まったく別の学問であり

別のロジックが存在します。

西洋医学中心の現代では、どうしてもそれに基づいたロジックで治療法を検証してしまうため

アトピー性皮膚炎の治療における「漢方」の位置づけはセカンドチョイス、サードチョイスとなってしまうことが多いです。

中医学、東洋医学をやっている人間から見ると

自ら行っている診療を西洋医学的に評価されることは

バスケットボールのルールに則ってハンドボールの試合の審判を勝手にやられている。。。

といった感じになるのではないでしょうか。

というわけで

西洋医学的な視点から「漢方」を評価することに??と

個人的には感じてしまいますが

それでも西洋医学的根拠に裏づけされつつある漢方薬もあるので紹介します。

今回は小柴胡湯(しょうさいことう)

僕ら、西洋医学を主体に勉強してきた人間にとって

小柴胡湯はアトピーに効く薬というより、他の弊害で有名な薬です。

それは、C型肝炎の治療に用いられるインターフェロンとの併用による間質性肺炎の副作用です。

肝硬変、肝癌などの患者さんには小柴胡湯を使ってはいけない。。。

これは医師国家試験レベルの知識として必ず知っています。

というか、西洋医学をやっている人間からしてみたら

小柴胡湯に関する知識はこれだけ。。。と言っても過言ではないくらいです。
(お恥ずかしい話なんですが。。。)


小柴胡湯にはサイコサポニンdという成分が含まれています。

これは抗炎症作用を持っており、ステロイドと非常に似た作用を持つことが報告されています。

アトピー患者さんに小柴胡湯内服を用いた場合

ステロイド外用剤の減量、離脱が可能であった報告がされています。

まだまだ(西洋医学的に)十分検証されている薬ではないものの

研究データの裏づけがすすめられている漢方薬です。

どうしてもアトピーの治療がうまくいかない時は試してみる価値があるかもしれません。


小柴胡湯は医師の処方箋なく市販の購入が可能です。

そのため、購入者自身に正しい知識が必要となります。

途中にクドクドと書きましたが

インターフェロンとの併用は危険です。

また肝硬変、肝癌の方は使ってはいけません。

出来れば専門家の指導の下、内服するのが良い漢方薬だと思います。

十分に注意してください。

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アンテドラック追加

アンテドラック一覧に以下を追加します。

ご連絡くださった読者の方、資料を提供してくださった製薬会社の方に感謝いたします。

また、追加分は元記事の「アンテドラッグ」にも記載してあります。

アンテドラッグ追加分

アンテベート

プロパデルム

ロコイド

以上の3つです。

以前書いたものとあわせて、これですべてだと認識していますが、万が一漏れている薬剤などありましたらご連絡ください。

ご指摘くださった方、ありがとうございました。

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プロトピックの使い方

ステロイド外用剤は、皮膚の免疫反応を広く抑制し抗炎症作用を起こすことが知られています。

そのため、アトピー性皮膚炎の治療においては非常に有用です。

しかし、長期的な使用によって皮膚局所への副作用が出現したり、不適切な使用による合併症が起きることが問題でした。

そこに登場したのがプロトピック軟膏です。

プロトピック軟膏の成分となるタクロリムスは、もともと臓器移植の拒絶反応を抑制する目的で開発されたお薬です。

それを外用剤として応用したのがプロトピック軟膏です。

話が少しそれますが、ステロイド外用剤も始まりは関節リウマチ患者さんに有効であったステロイド内服薬を、全身への副作用が少なくなるように外用剤として使われたた経緯があります。

さて、このプロトピック軟膏、ステロイドとは違う作用機序でアレルギー、炎症を抑えます。

ステロイド外用剤が幅広い抗炎症作用であったのに対し、プロトピック軟膏は白血球の一部であるTリンパ球の機能を抑制することでアレルギーの炎症を押さえ込みます。

念のため記載しておきますが、プロトピック軟膏にリバウンド現象などというものは起きません。

「プロトピック軟膏のリバウンド」という言葉を流布しているのは、現代医学を否定することで自らのアトピービジネスを反映させようとする医療者のみです。

このプロトピック軟膏にはステロイド外用剤に比べ、いくつかの利点があります。

① プロトピック軟膏の分子量は通常の皮膚から吸収される分子量より大きい。

これは、正常の皮膚からはプロトピック軟膏が吸収されず、炎症のある部位でのみ吸収されるということです。

湿疹が起きているところにプロトピックを塗り始め、炎症が収まるとその部位からは吸収されづらくなります。

つまり副作用が起きづらくなるということです。

② プロトピック軟膏は皮膚のバリア機能を落とさない。

ステロイド外用剤は皮膚のバリア機能を落とすことが知られています。しかし、このプロトピックはバリア機能を落としません。

感染防御に対しても、プロトピックの方が優れていると言えます。

③ 長期的に使用しても皮膚局所への副作用を起こさない。

ランク3以上のステロイド外用剤は、皮膚局所への副作用を考えると顔面に使用するということが少なくなります。しかし、プロトピック軟膏は皮膚局所への副作用がないため顔に使うことが出来ます。

またその他の部位でも長期的に使うことが可能です。

例えばステロイド外用剤で皮膚が薄くなった肘の内側。ここをプロトピックに変更してしばらく経過を見ると、皮膚がもとに戻っていく症例が学会ではよく提示されます。

このようにステロイド外用剤だけでは克服出来なかった問題、副作用のハードルを乗り越えてくれたのがプロトピック軟膏です。

正しく使えば、これほどアトピー治療に有用なお薬はありません。

さて、これからは皆さんが気になる注意事項です。

① 使用初期はヒリヒリしたり、刺激を感じることが多い。

ただし、これは使用を続けていけばいずれ消えます。

ヒリヒリしなくなることは、炎症が落ち着いて皮膚が正常に戻った為、プロトピックが吸収されなくなったんだな、と思ってください。

② 感染部位や傷口には使わないこと。

プロトピックが作用を発揮するT細胞は、感染の現場でも重要な働きを担っています。

傷口、飛び火、水いぼ、ヘルペス、水虫などの感染部位には使用しないこと。

そして最後

皆さんが気になるところは

③ 実験用のネズミにプロトピックを長期間外用することで、リンパ腫と言う癌の増加が見られ、また、プロトピック外用中に因果関係は不明だがリンパ腫が見られたとする報告が海外である。

とする部分ではないでしょうか。

ネットでプロトピックについて検索し、使うことをひるむ理由はずばりこの最後の部分であると思います。

この解説については、一番最近の国際紙に発表されたUCSFからの論文

"Unknown Risks" of non-steroid topical medications for atopic dermatitis.
Int J Dermatol. 2007 656-658

を参考にさせて頂き、解説してみようと思います。
 
まず、元となるネズミの実験

これはプロトピック軟膏を2年間BL6C3Fiというネズミに塗り続けたものです。

まず、このネズミの2年というのは人の一生と同じくらいの長さであるということを知っておいてください。

0.1%プロトピック軟膏(成人用)を塗り続けた場合、ネズミにリンパ腫が出現したと始めの研究では報告しています。

しかし、ネズミの皮膚は人に比べて非常に薄い。

リンパ腫が起きたネズミの血液中に含まれていたタクロリムス(プロトピック)の濃度は、臓器移植後に免疫抑制で内服に用いられるタクロリムスの最大濃度の26倍もありました。

また、0.03%プロトピック軟膏(小児用)を使っておこなった実験でも

血液中のタクロリムス(プロトピック)の濃度は、内服のそれに比べ10倍多いものでした。

しかも、この血中濃度ではネズミにリンパ腫を作りません。

これらのデータは、以下にネズミがお薬を吸収しやすく、血液中に増加させているかも示すものです。

面白いことに、このタクロリムス(プロトピック)を免疫抑制に使う最適の内服量の9倍を、ネズミに飲ませてもリンパ腫は出来ませんでした。

また、もともとこの実験に使ったBL6C3Fiというネズミ。これは自然に飼っていてもリンパ腫が起きやすいネズミとして知られています。

人では癌を全く起こさないような物質ですら、このネズミにはリンパ腫を起こすことができます。

ちょっと難しかったですね。

簡単にまとめます。

ネズミの2年間(人で言う一生)をかけプロトピック軟膏を外用しました。

ネズミの皮膚はとても薄く、血液中には人で使う26倍近いタクロリムス(プロトピック)の濃度が検出されました。

しかも、このネズミ、放っておいてもリンパ腫を作ることが知られています。

このような特別な状況において、プロトピック軟膏はネズミちゃんにリンパ腫を引き起こしていたのです。

次に

海外で見られた人におけるリンパ腫の発生とはどんなものか?

これはプロトピック軟膏を使用した約7000の患者さんのうち、2名にリンパ腫が見つかったというものを元にしています。

注目すべきなのはこのリンパ腫を起こした二人。

一人は68歳。このプロトピック軟膏の外用開始前から耳下腺に出来物が合ったことには気がついていました。そして、このプロトピック軟膏の調査が始まり、この出来物がリンパ腫であるということが解ったのです。

プロトピックを使う前からもともとリンパ腫があった患者さんを、試験に含んでしまったんですね。

もう一人は60歳。

この方は7年ぐらい全身の湿疹ということで治療を受けていたあとに、プロトピック治療の調査群に入りました。

この全身の湿疹と言うのが、実は皮膚のリンパ腫だったという症例です。

つまり、もともと誤診があって、皮膚リンパ腫の患者さんを湿疹だと思って治療していて、それからプロトピックの調査に入れてしまった、ということ。

こうやって一つ一つ症例を見てみると、7000例中2例にリンパ腫が発生したという報告がいかにお粗末なものかわかると思います。

というわけで、

ネズミさんの実験でも人の場合でも、

プロトピック軟膏がリンパ腫を起こす原因となる

と脅すには不十分であることがわかりますね。

プロトピック軟膏は、正しい使い方、正しい使用量(成人では1回5g、1日2回まで)を守って使えば、ビクビクする必要はありません。

非常に良いお薬です。

長くなりましたが、最後に皮膚科学会に苦言です。

アメリカのFDAや厚生労働省では、プロトピック軟膏と発がん性の関係について医者は説明しないといけません、とルールを決めています。

実際、プロトピック軟膏とリンパ腫には関係はないという結論なんですが、あくまでもルールはルールです。

学会に行くとたまに、このルールを無視した発言が聞かれます。

医者から説明をうけないでネットで知った時、患者さんが医療不信に陥る可能性があります。

皮膚科の先生方、忙しくてもきちんと外来で説明してあげてくださいね。

というか、外来でこの説明はしょってると、

後で痛い目の合うのは僕ら皮膚科医のほうですぜ。

こんなところで腋が甘いのは学会としてよろしくないと、敢えて内部のものが言わせて頂きました。

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ステロイドと保湿剤の混合①

僕ら皮膚科医は、時として軟膏を混ぜて処方することがあります。

これは2種類の塗って欲しい薬がある時に、

別々に塗ってもらうのは面倒くさいだろうなぁ、

とか、

2種類だとちゃんと塗ってもらえないだろうなぁ、

と考えた結果でのことです。

しかし、中には混ぜると効果が落ちてしまうものもあります。

今日は混ぜてはいけないお薬についてのお話。

本来ならステロイドはステロイド、保湿剤は保湿剤で処方し、そして外用してもらいます。

ちゃんと外用してくれなさそうな患者さん、

お薬を使い始めの患者さん、

複雑にしすぎると治療自体が面倒に感じてしまいそうな患者さん、

などなど、その人その人の性格や条件など考えると、

ステロイドと保湿剤は混ぜて処方したほうが良いな、と思う事がしばしばあります。

でもですね、

中には混ぜると分離してしまうお薬があります。

主に注意すべきなのが

O/W型(水中油型)と呼ばれるクリームと軟膏の組み合わせです。

これは分離します。

O/W型と呼ばれるクリームには

ウレパール、オイラックス、ザーネ軟膏、ケラチナミン軟膏などがあります。

こういった保湿剤とステロイド軟膏を混ぜると分離し、長持ちしませんし、効果も落ちます。

例えば、キンダベート軟膏とザーネ軟膏が混ぜてあるものは分離しますので良い組み合わせではありません。

これは僕ら医者も知っておかなければいけませんし、患者さん側も知っておいた方が良い情報です。

勘の良い方は気がついたと思いますが、

例えばザーネ軟膏

これO/W型と呼ばれるクリームなのに名前に「軟膏」がついているんですよね。。。

よっぽど薬についてちゃんと理解していないと間違えてしまいそうです。

お薬を作る側も、こういったネーミングの段階で一工夫する必要がありますね。

外用も慣れて来たら面倒くさがらずに、ステロイドはステロイド、保湿剤は保湿剤で塗るようにしましょう。

混合軟膏って意外と気を使うところが多いですので。。。

その他の注意点はまた次回という事で、今日はここまで。

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リンデロンVGの使い方

リンデロンVGは皮膚科医のみならず、多くの医者が処方するステロイド外用剤の1つです。

このリンデロンVG、ステロイドと抗生剤(VGのGは抗生剤ゲンタシンの頭文字)が一緒になったもので発売当初は使い勝手が良く大変人気がありました。

なぜなら、「飛び火」のような感染があってしかも痒い病気に使用出来たんです。

普通、ステロイド外用部位は菌やウイルスに弱くなるので感染症には簡単に使えません。

でも、リンデロンVGはゲンタシンという抗生剤が入っているため、感染がちょっとあるようなかき傷にも使えました。

そしてよく効きました。

リンデロンVGが出た当初はね。

抗生剤は適切に使えば非常に有効なお薬ですが、いい加減に使うと痛い目にあいます。

リンデロンVGはあまりにもいい加減に使われすぎたお薬だと思います。

今現在、ゲンタシンが効く飛び火はほとんどありません。

飛び火の原因である黄色ブドウ球菌の70%以上が、ゲンタシン耐性の菌だと言われています(論文によっては90%以上という人もいます)。

これはね、なんでもかんでもリンデロンVG、ゲンタシンを外用し続けて来た結果です。

皆さん良くご存知の通り、表皮にいるブドウ球菌、黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎の増悪因子の一つと考えられています。

普通、黄色ブドウ球菌はどんな抗生剤にも反応しますが、いい加減に抗生剤を使用すると多剤耐性の黄色ブドウ球菌(MRSA)が出現します。

MRSAは良く院内感染などで問題となる菌です。

皮膚の表面、粘膜の表面に住んでいるだけでは悪さはしませんが、感染してしまうと治療に手こずります。

アトピーの患者さんはかき傷が多いですので、感染しやすい下地は出来ています。

このため、抗生剤耐性の菌はなるべく増やさないにこした事はありません。

僕はリンデロンVGをほとんど処方しません。

だって、今やG(ゲンタシン)の意味がないから。

それどころか、無駄に抗生剤耐性の菌を増やしてしまうから。

ステロイドはステロイドで使います。

抗生剤は必要な時に抗生剤として使用します。

とりあえず抗生剤が入っていれば良いだろう。。。

こういう考え方は僕ら医者も、そして患者さんも改めなければいけないところだと思います。

リンデロンVG、悪い薬ではありません。

でも、なんにも考えずに使うのはお勧め出来ません。

「とりあえずリンデロンVG」は改めるべきです。

その皮疹には本当にG(ゲンタシン)が必要なのか?

使う側も賢くなる事が大事です。

毎回、リンデロンVGを処方される先生には、一度

「このゲンタシンは必要ですか?」

と聞いてみてください。

患者さんからの意外な質問は、時として医者を育てます。

僕ら医者は、患者さんからのフィードバックがあった時、その時こそ医者として成長出来るチャンスです。

なーんて、

偉そうな事を書いてしまいました(笑)。

「リンデロンVG」

きちんと使えているようで、意外とみんな使えていないお薬です。

参考にしてください。

他の薬や病気の情報はこちら

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アンテドラッグ

以前の記事でアンテドラッグについて書いたところ

「アンテドラッグは病院では処方してもらえないのでしょうか?」

といった質問を頂きました。

きっと同じような疑問をもたれている方も多いと思いましたので、今回の記事は「アンテドラッグ」です。

まず、アンテドラッグとはどういう薬の事をさすのでしょうか?

アンテドラッグとは1982年に提唱された概念で

「科学的修飾により投与部位では活性を有し、循環系に入ると速やかに代謝されて不活化する物質」

という意味です。

ステロイド外用剤を例にとると、皮膚局所ではステロイドの効果を発揮するが血中にはいるとすぐに分解されるお薬という事になります。

弱いステロイド剤の場合(例えば、ロコイド、キンダベート、アルメタなど)、そうそう全身の副作用が出るようなことはありません。

しかし、強いステロイドの場合、大量に長期外用をし続けると、ステロイド内服と同じような副作用が出る危険性があります。

例えばvery strong(上から2番目の強さ)のステロイドの場合、1日10g、最長で3ヶ月間使うのが全身の副作用が出ない安全量のマックスです。

でも、これは1ヶ月5gチューブを60本使い切る事と同じですから、まず心配しなくて良いレベル。

それでも、より安全に使えるように、アンテドラッグと言うものが開発されました。

日本初のアンテドラッグは大正製薬のパンデル(very strong)というお薬です。

パンデルは国内初のアンテドラッグステロイド外用剤としては有名なのですが、あまり処方されないお薬です。置いてない病院も多いんじゃないかな。

その後、いくつかのアンテドラッグステロイド外用剤が開発されています。

ここで、教科書などいろいろ調べていて気がついたのですが、アンテドラッグについてきちんと表にしたようなデータがない、のです。

普通ステロイド外用剤のランクは、どんな教科書にも、また一般向けの本やインターネットでも見つける事が出来ます。

しかし、アンテドラッグ一覧表なるものは、僕が探した限り見つからない。。。

しょうがないですね、こういう場合。

ステロイド外用剤1つずつについて、発売元の製薬会社のホームページからインタビューフォーム(以下IFとします。お薬について添付文書以上に詳しく書かれたもの)を調べていきました。

1.2時間かかりました。

なので、大事に読んでください(笑)。

発表します。

アンテドラッグステロイド外用剤は以下です

「マイザー」

「パンデル」

「リドメックス」

の3つだけ。
(ブログを読まれた製薬会社の方で、うちのこの薬もアンテドラッグだよ、っていうのがあれば教えてくださいね。)

ステロイドのランクとしては、マイザーとパンデルはvery strong、リドメックスはstrongです。

リドメックスに関してはIFがきちんと入手出来ず、成分である吉草酸酢酸プレドニンというアンテドラッグとして使われているものからの逆引きです。

追記:製薬会社の方より連絡を頂き、文献をもらいました。

アンテベートもアンテドラッグに含むそうです。

また、ロコイド軟膏、プロパデルム軟膏もアンテベートの定義に含まれる、と書いてある文献も見つけましたので追加します。

またアルメタ(very weak、上から4番目の強さ)も同様に「局所での作用>全身での作用」の差が大きい薬として記載されています。

調べた時間を考えると、労多い割にアンテドラッグ少なし、といったところでしょうか。

そりゃぁ、表にもならないわな。。。

では、実際に皮膚科でどうやって処方してもらうか考えてみましょう。

「すいません。今使っているステロイド外用剤をアンテドラッグに変えて欲しいのですが。。。」

と言って通用する皮膚科医は残念ながら多くないと思います。

そこで

「このお薬を○○(アンテドラッグ薬品名)に変える事は出来ますか?」

と直接薬の名前を出して変更をお願いするのが良いと思います。

ただし変更が可能なのは、同じレベルのステロイドのみです。

リンデロン使っている人が「マイザーに変えてください。」と言っても、ランクが変わるのでなかなか難しいと思います。

このあたりの判断は、実際に皮膚を見ている主治医の判断が一番です。

症状にあったステロイドを処方してもらってください。

アンテドラッグにこだわるあまり、本来のアトピーの治療が厳かになったり過剰になってしまっては本末転倒です。

あくまでもアンテドラッグは「より安心してステロイド外用剤を使う」ためにあるものです。

何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」です。

アンテドラッグは知識としてしっかり覚えておいて、賢く使いましょうね。

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アンダーム(ブフェキサマク)の使い方

最初に結論を述べてしまいますが、アトピー性皮膚炎にはアンダームを使用しないことが近年の皮膚科では主流になりつつあります。

アンダームとは薬品名ブフェキサマクであり、非ステロイド性の抗炎症剤と呼ばれるものです。

市販の外用剤でもブフェキサマクが主成分となる外用剤が多くあります。

非ステロイド性という名前の通り、アンダームにはステロイドは含まれておらず、どこか安心して使えてしまうような錯覚を起こす薬です。

しかし、実際のところアトピー性皮膚炎に対して効果があるというしっかりしたデータはなく、欧米のアトピー治療ガイドラインにはアンダームの使用は含まれていません。

それどころか、ブフェキサマクという成分がアトピーを悪化させるという動物実験のデータがあることや、ブフェキサマクによるかぶれが高頻度に起こる事から、むしろアトピーには使わない方が良いのではないかという議論もあります。

なんとなく、非ステロイド性なので怖くない、と思いだらだらと使用しているとアトピーを悪化させたり、かぶれが起きたりする可能性があるわけです。

僕個人の意見としては、アンダームを使うくらいなら、ワセリンやヒルドイド、アズノールを使う方がまだましかと思っています。

非ステロイドだから安心、というのは間違いで、どんな薬でも副作用はあり、メリットとデメリットのバランスを考えながら治療していく事が大事です。

アトピーに関してのみ言うと、現段階ではアンダームはデメリットが上回っていると判断するお薬です。

患者さんの声はこちら

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ヒルドイドの使い方

ワセリンと並んで保湿剤としてよく使われるものと言えばヒルドイドです。

ヒルドイドの主成分である「ヘパリン類似物質」は本来、血液を固まりにくくする作用があることで知られていました。その後、保湿効果もあるということが解って、現在は保湿剤として使われる方が多くなっています。

このヒルドイド、名前の由来がドイツ語のHirudo(蛭属)と~oid(~の様なもの)が組み合わさってできたものです。

蛭の唾液腺には血を固まりにくくする成分があり、これと似た作用を持っているから「ヒルドイド」になったんです。

ヒルドイドはもともと血を固まりにくくする(血流を改善する)お薬なので、僕ら皮膚科医はしもやけにも処方したりします。

ワセリンはただの油なのに対し、ヒルドイドは保湿効果のある成分が含まれています。

なので、ワセリンのようにわざわざお風呂上がりを選んで塗らなくても、いつでもどこにでも使えたりします。

このようにワセリンとヒルドイド同じ保湿剤とはいえ、使い方も違ってくるんです。

アトピーの治療に保湿は非常に有用です。

しかし、保湿は1日1回塗ったらおしまいというものではありません。

お風呂上がりに保湿剤を塗って、次の日の夕方まで肌がしっとりしていたことがありますか?

僕はいつも患者さんには

「保湿剤はリップクリームのように使ってください。」

と説明しています。

お薬箱に大事にしまい込むのではなく、普段からカバンに入れて持ち歩いて、乾燥してるな、と感じたらその都度塗るようにする。

そうやって、こまめに、肌の調子に合わせながら保湿をしてあげると断然調子が変わってきます。

乾燥肌を予防するだけで、湿疹の予防になり、ステロイドの使う量も減ってくる患者さんが多い。

ほんと、保湿は手間がかかりますが、努力すれば努力した分だけ効果が見えてくる治療です。

このこまめに塗る保湿剤として、ヒルドイドはとっても優れていると思います。

是非、ヒルドイドは持ち歩いて、トイレに行くときは一緒に保湿するくらいの気持ちでいてください。

もちろん、ヒルドイドにもいくつか副作用があります。

人によっては軽い刺激感があったり、かぶれたり、最近の報告ではアザができたりすることもあるようです。

こういった症状があったり、使っていておかしいな、と感じることがあったら、処方してくれたお医者さんに一度相談してください。

それから、湿疹になってしまったところを頑張って保湿してもなかなか治りません。

こういう時はきっちりステロイドを塗りましょう。

いつ、どういうところに、どんな薬を塗るか

これが自分で解るようにならずして、外用を馬鹿にしてはいけません。

外用の奥深さは、また時間をかけて説明していくことにして、今日はおしまい。

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妊娠線予防クリーム

「妊娠線を予防したいんですけど。。。」

と、外来で聞かれることがたまにある。

話を聞いてみると、妊娠線予防クリームを使っている妊婦さんがとても多い。

しかも高い(らしい)。

妊娠線が出来ないようにするためなら、多少高額な化粧品の出費もやむを得ない気持ちは男性の僕にも解る。

でも、ほんとうに効果があるのだろうか。
と考えてしまった。。。(いつもの悪い癖で。)


「妊娠線」は正しい病名ではなく、「線状皮膚萎縮症」と言うのが正しい。

幅数ミリで数センチの長さに伸び、それぞれはほぼ平行に走る線で、わずかに陥凹しているのが特徴。

妊娠線が有名だが、男性でも急激に太った場合はお腹に限らず「線状皮膚萎縮症」は出現する。

一般に、急激な皮膚の進展により避けてしまうのが原因と考えられている。


と、まぁ難しい説明はここまでとして

治療については皮膚科の教科書にはなんて書いてあるのだろうか。

皮膚科分野でもっとも一般的な教科書「マイナー皮膚科学(マイナーと書いておきながら800ページくらいあるほとんど辞書みたいなもの)」によると

「非可逆的で、よい治療法もない。」

非可逆的というのは、もとに戻らない、という意味。
つまり1回出来たら戻らないよ、ってこと。

むむむ。。。

諦めずにもう一冊、これまた皮膚科の一般的な教科書「皮膚病アトラス」によると

「一度発生したものは非可逆的で治療法はない。」

同じだわ(涙)。


教科書というのは、間違ったことをなるべく書かないように作られていて、しかもその時の一般的な医学知識を載せていることが多い。

つまり、現在の医学の一般的な知識として、妊娠線の予防と治療について効果のあるものはない、ということ。

教科書に比べ論文というのは最新の知見を載せていることが多い(発表した次の年に間違っていました、なんてこともあるから教科書に比べ信用度は低い)。

そこで論文では何かないかと、全国の医学系雑誌が検索出来る「医中誌」という検索サイトで調べてみた。

「線状皮膚萎縮症線 治療」と入力しenter

。。。

該当0

条件を甘くして

「線状皮膚萎縮症」だけで入力してみたが4件ヒットしたものの、内容は関係ないものばかりでした。。。

さらに、医学用語ではないけれども「妊娠線」で検索してみると多少論文はヒットしたが、掲載している雑誌が皮膚科の専門誌でないものばかり。。。

どうも科学的に根拠のありそうな治療法はないというのが結論。


では切り口を変えてみて、妊娠線予防クリームと呼ばれるものはなにを持って妊娠線予防クリームを謳っているのだろうか。。。

主なものは

日本ランウエル、ピジョン、ポーラ、クラランスなどからボディケアミルク、もしくはマッサージクリームの名前で販売されているものがほとんど。

成分としては、セラミド、コラーゲン、ビタミンを中心にそれぞれ天然のなんとかエキスを混ぜたものが多い。。。

いくつか全成分を載せているクリームがあったので、こんな見方をしてみた。

「成分だけを見て、このクリームがなんの薬だと思うだろうか。。。」

。。。

答えは、保湿剤。

そう、これら妊娠予防クリームと呼ばれているものは、ほとんどが保湿剤。

今後、なんとか抽出成分が妊娠線予防に効果があるという大発見がない限り、保湿剤と呼ぶのが正しいだろう。

更に考えてみた。

妊娠線予防クリームが保湿剤なら、妊娠線予防には保湿が効果あるのだろうか。

これについては唯一発見出来た本当っぽい説明は

「肌が乾燥していると湿疹がおきやすく、皮膚にダメージを受けやすい。そのため、保湿をすることでこれらのダメージは予防出来、妊娠線が出来やすくするのを防ぐ。」

というもの。

そりゃ、湿疹出来ない方が肌にダメージは少ないけど、妊娠線の直接の予防ではないやん。

百歩譲って、保湿が妊娠線予防に効果があるとして、普通に市販されている(病院でもらえる)保湿剤では駄目なんだろうか。。。


と、夢も希望もない話になってしまいそうなので、ここまで調べてみて

「妊娠線を予防したいんですけど。。。」

という患者さんが来たら、なんとアドバイスをするか。

僕なら

「急激に太らないようにしてくださいね。」

って言います。

妊娠線予防クリームは積極的には勧めないし(やめさせることはしません。クリームを塗ることでリラックス出来るんならリラックス効果はあると思うので)、保湿剤も全員に処方しないと思う。

つわりが終わって食欲が出始めた時期に、急激な体重増加がないように指導します。

なーんだ、って思うかもしれない。

でも、こういう薬を使わない生活指導って医療をするうえですごく大事なんだよね。


こういうことを調べたり考えたりしていて、皆さんに知ってもらいたいな、って思うこと。

「病気の治療や予防効果は、お金をかけることに比例しない。」


今日は少し長くなりました。
最後まで読んでくれてありがとう。

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ワセリンの使い方

保湿剤の中でもっともスタンダードなものがワセリンです。

アトピーの患者さんであれば、一度は必ず処方されたことのある外用剤でしょう。

成分はまったくの油であり、特別に肌によいものが含まれているわけではありません。

そのため、敏感肌の人も割りと安心して使える保湿剤です。
(さらにかぶれ安い人には、ワセリンから不純物を取り除いたサンホワイトというものもあります。)

日常の診療をしていると、ワセリンの正しい使い方を知っている患者さんが少ないことに驚かされます。

ワセリンは保湿剤である。
     ↓
乾燥しているところに外用する。

と思っている患者さんは、正しい使い方を指導されていない方です。


ワセリンは乾燥している部分に塗っても保湿の効果はありません。

ワセリンは油です。
しっとりした肌の水分を逃がさないように、油でコーティングするのが目的です。

つまり、普段は乾燥している部分でもお風呂上りなどは皮膚も水分を多く含みしっとりします。
このしっとりを逃がさないように、また、なるべく長時間しっとりを持続できるようにワセリンを塗るのです。

ためしに、乾燥した肌と湿らせた肌の両方にワセリンを塗り比べてください。

乾燥した肌ではワセリンはかさつき、なかなか伸びないのに対し
湿られた肌では、ワセリンの伸びがよいことに気づくでしょう。

ポイント!!
「ワセリンはお風呂上りのしっとりした肌に外用する保湿剤です。」

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