カテゴリー「掻かない工夫シリーズ」の5件の記事

掻いてしまう2つの理由

「掻く」という行為はもともと、体に付いた寄生虫などを払いのける動作として存在していたという説があります。

外からの異物の侵入を防ぐという意味のあった行動だったんですね。

しかし、衛生環境が整った現代社会では、この「掻く」という行動の本来の目的は消えつつあります。

そしてやっかいなことに、「掻く」という行動の負の面だけが残ってしまいました。

掻く事で、かゆみを更に引き起こしたり、皮膚に傷がついたり、

こういった肌へのダメージを、皆さんは嫌という程感じていると思います。

この「掻く」という動作をコントロール出来るだけでも、湿疹は相当良くなります。

なので、皮膚科医はみんな「掻かないでくださいね。」と無理な提案をするわけです。

言うは易し行うは難し。

「掻かないでください」と言われ、掻かないで済む人は皮膚科には受診しませんね(笑)。

掻く行動をコントロールするには、どんな時に掻くのか、その理由まで戻って考える必要があります。

よく思い出してみましょう。

あなたが掻いている時を。

「掻く」理由は大きく分けて2つあります。

一つは、痒いから掻く。

もう一つは、いつの間にか掻いている。掻くと安心する。

よくよく考えてみると、知らず知らずに掻いている事ありませんか?

ホッとした瞬間、緊張している時、なにか精神的な変化が起きたとき、気がつくといつもの場所をいじっていたり、引っ掻いていたり。。。

掻き始めてしまったら、どんどんあっちこっち痒くなって止まらない、なんてことありません?

さて「掻く」理由には2つあるわけですから、「掻かないようにする」対策もそれぞれ別にあるわけです。

痒みがある時に掻くのは、異物の侵入を防ぐといった目的を持つ生理現象です。

これは我慢でなんとか出来るものではありません。

きちんとステロイドを塗りましょう。

すぐにかゆみを抑えたいのなら冷やす事。

時々、熱湯でかゆみをとる方もいますが肌を痛めますのでお勧めしません。

この痒いから掻くという行動をやめなさい、と言う皮膚科医がたまにいますが、これはメチャクチャです。

「眠いのに体に悪いから寝てはいけませんと言われて、先生はずっと寝ないでいられますか?」

とかなんとか言い返してみてください(笑)。

それか

「痒いからなんとかして欲しいと受診しているのに、掻かないように我慢しろとはこれ何事じゃ。」

と言ってあげてください(笑)。

かゆみをしっかりとる為に、抗アレルギー剤やステロイド外用剤は存在しているわけですからね。

怖がらずに、正しく使えるようにしましょう。

では、もう一つの「掻く」理由。

精神的な理由で掻いてしまう、この行動はどう抑えたらいいでしょうか?

まず最初に日記をつけること。

3坊主で良いので、

いつ、どんなとき、どこを、どれくらい掻いたかメモに残す。

自分がどんな時に、どういう気持ちの状態の時に、どこの部分を掻いているのか知る事です。

あなたがよく引っ掻く場所は、いつも湿疹が悪化する場所でもあります。

顔の湿疹がなかなか良くならない方の中には、緊張するとつい顔をいじってしまう人がいます。

安心してテレビを見始めると、ぼりぼり背中を掻き始めてしまう人もいます。

まずは自分の癖を知る事です。

いつ、どこを掻いているのか気づく事が最初のステップ。

次に、この癖をどう直すか。

これは一朝一夕に出来るものではありません。

根気よくつき合っていくこと。

一般的には、イライラしたら手を組む。

手触りの良いクッションをいつも持っておき、掻きそうになったら触る。

お子さんの場合、掻いている手を取って一緒に踊る(楽しそうでしょ?)、などあります。

肌を触る事で安心してしまう癖を、他のものを触る事で安心するように少しずつトレーニングをしていきます。

身の回りにあるもの、手触りの良いもの、なんでも構いません。

何かひとつ決めておく事が大事です。

これまた、言うは易し行うは難し。

なかなかすぐに上手に出来るものではありません。

ゆっくり諦めずに取り組んでいきましょう。

間違えて欲しくないのは、

まずはちゃんとお薬を使って炎症やかゆみを抑える事です。

それが出来たうえでの、掻かない工夫が大事です。

ステロイド、外用の正しい知識を身につけて、しっかりお薬が使えるようになりましょうね。

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掻かないためには。

アトピーの患者さんは掻いてストレスを発散することが多いようです。

イライラしたり、ストレスがかかったときに、つい掻いてしまう。

そして、掻くことで精神的に落ち着きます。

僕が見た感じでは、仕事中に掻く人より

仕事が終わって家でほっとした瞬間に掻く人が多い。

掻き始めて、意識的にすぐ掻くことがやめられる人は、症状の軽い人。

アトピーで悩んでいる方の多くのが、掻きはじめると収まらない、血が出るまで掻いてしまう。

掻き始めは痒くないかもしれない。ただ、掻いているうちに体中が痒くなってしまう。

掻いちゃ駄目と思っているけど掻いてしまう現状が苦しい。

散々かきむしったあとに、すっきりして、でも、掻いてしまったことに罪悪感を感じる。

そして、皮膚科に行くと

「こんなに掻いちゃ駄目だよ!」

。。。また罪悪感。

自分の意思の弱さを責めて、自分を嫌いになってしまう人。

一向によくならないアトピーに、皮膚科医を心から恨む人。


なんだか、みんな掻くことに縛られていませんか?

そういう状況を改善しませんか?と提案しているのです。


成人のアトピーの場合

精神的なストレスが、アトピーの症状に大きく影響します。

職場を変えてストレスが減った瞬間に、アトピーが良くなった人

身近な不幸を耳にした瞬間、全身が痒くなった人、

など心と痒みには何らかの関係があると、患者さん自身が感じることがあるだろうし専門家の中からも意見が出ています。

拒食症の患者さんはストレスが体重に影響しますが、アトピーの方は皮膚に影響してしまう。

それは

ストレス→掻く→安心する→掻いてしまったことに対するストレス

という、ストレスのサイクルが出来ていたからだと考えます。


アトピーを治療しようとする場合、まずこのサイクルに気が付かないといけない。

そのために、何時、何処をどれくらい掻いたか日記をつけましょう、と提案します。

ストレスで掻いてしまう現状に気が付くのが第一ステップ。


つぎに

ストレス→掻く→安心する→掻いてしまったことに対するストレス

のサイクルを訂正することが大事。

ここで「掻いちゃだめ!」と思うことは、最後の掻いてしまったことに対するストレスを強めるだけです。

これでは、ますますストレスのサイクルは強くなってしまう。


この「掻く」というステップをなくすのではなく、他のことに変える

ストレス→○○する→安心する。

というイメージを持つことが大事です。


この○○する、は何でもいい。

手を組む、という簡単なものから

音楽を聴く、本を読む、エステに行く、整体に行く、などなんでも良い。


人によっては、掻いてストレスを発散できるのなら掻きたいだけ掻けばいい、という人もいます。

だが僕自身、これはお勧めできない。

そもそも、掻くことでストレスを発散していたことに問題があるのだから

掻きたいだけ掻くことは、ますますこのストレスのサイクルに依存してしまうことになる。

そうではなく、他のストレス発散のルートを作り

このサイクルから抜け出すことが大事だと言いたい。


以上、当たり前のようですが、

自分の心の中に出てくる言葉を思い出してください。

「あー、掻いちゃった。」

「これから掻かないようにしよう。」

「なんで掻いてしまうんだろう。。。」

など、ストレスのサイクルを強めるものばかりではないですか?


自分への言葉を変えていきましょう。


「掻かないようにするにはどうしたら良いだろう?」

は自分に対する間違った質問文。

「私は、どんなときに一番安心するだろう?」

のほうが正しい。


考えることは大事です。

ただ、考えるときの言葉はもっと大事なのです。

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掻いちゃ駄目なの?

アトピーやその他の皮膚病すべてに言えることですが

湿疹の部分はもちろん、正常の皮膚だっていじったら悪くなります。

昔読んだ論文に

「正常な皮膚を一日掻きむしったら湿疹になった。」

という内容の、なんとも気持ち悪い報告がありました。


試しに僕もやってみました(笑)。

さすがに1日中は無理でしたが

何日か続けるうちに、わざとこすっている左前腕伸側がヒリヒリと痛くなって来ました。

赤みも出てきて、怖くなったので実験終了。

恐がりの僕は湿疹を作ることは出来ませんでしたが、皮膚の赤みやヒリヒリ感は体験することが出来ました。

「湿疹は自分で作れる。」

ただ、それ以上に大きな発見が2つありました。

発見その1

「自分の肌を触っていると、とても落ち着く。」

よく緊張すると人間は、もじもじして手をもんだりします。

アトピーの患者さんは、緊張しているときに手や太ももや顔をこすっている事が多いみたいです。

自分の皮膚を触る、という行為は安心感を与えるのでしょう。

これをずっとやっていると癖になります。

僕も自分で湿疹をつくる実験をしていた直後は、なんども無意識に手をこすっていました。

発見その2

「触っちゃいけないと思うとますます触りたくなる。」

実験も終了し、自分の皮膚を開放させてあげようとしたのですが

いじっちゃいけないと思うと、ますますいじりたくなってしまうことに気がつきました。

これは苦しかった。


話は変わりますが、

修行僧の話を知っていますか?

ある若者が、修行するにあたり師匠から一つ忠告をうけました。

「これからの修行では心を無にしなさい。あなたの修行中には(山から下りてきた)猿が邪魔をするかもしれない。でも、決して猿のことは考えてはいけない。」

結局その若者は心を無にすることは出来ず

猿のことを1日中考えていたそうです。


ここで、一つ実験をしてみましょう。

「今から、りんごの事だけは考えないでください。」

さてどうでしたか?

りんごは思い浮かべずにすみましたか?

これで、まったくリンゴを考えなかった人は悟りを開けます。

一人残らず、頭の中にりんごが浮かんだはずです。


例えばっかりで申し訳ありませんが

野球でバッターに
「今日のピッチャーは低めが鋭いから、低めには手を出すな。」

とアドバイスすると、そのバッターは低めに手を出してしまうことになります。

「掻いちゃだめ!」も同じ事です。

自分に「掻いちゃだめ!」

子供に「掻いちゃだめ!」

こうやって暗示をかけて、掻かないはずがない。

自分の意志が弱いのではない。

子供の努力が足りないのではない。

「掻いちゃだめ!」は「掻きなさい!」と言い聞かせているのと同じなのです。

「掻いちゃだめ!」はダメなのです。


では、どうしたらいいのでしょうか?

低めに手を出さないように、バッターにアドバイスしたい場合

あなたならなんて言いますか?


答えは

「高めをねらえ!」

です。

意識を低めではなく、高めに持っていくのです。


残念ながら、「低い」「高い」のように

「掻く」の反対はありません。

ただ、これは訓練で出来るようになります。


あなたがとにかく掻きむしってしまう時

何か他のことをする癖をつけましょう。そして他のことを考えるようにしましょう。


僕は髪の毛を触ってしまう癖があるのですが

その時は、両手で鉛筆を持ち、楽しいこと(内容は秘密)を考えるように努力しました。
(はたから見るとかなり変ですが。。。)

なんでもいいと思います。

自分に合った、害のない癖をつくりましょう。

患者さんに薦めているのは

手をくみましょう。そしてたまに手を開いて自分のしわを覚えるようにしましょう。

アトピーの子供さんをもつお母さんには

子供が掻いているときは、その手を握って歌ったり踊ったりしましょう。

と説明しています。

「掻いちゃだめ!」と叱るより、愛情の感じとれる努力だと思います。


自分のことになるとすぐにできる訳ではありません。

ただ、あきらめないでじっくり努力すれば良いと思います。

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かゆみ過敏

アトピーの患者さんは痒みに対して過敏であるという報告があります。

感覚を伝える神経には、痒みを伝える神経と痛みを伝える神経があり

普通それぞれは抑制しあっています。

つまり、痛み刺激があると痒みは感じにくくなるということ。
(虫刺されの痒い部分をつねったり、爪を立てて押したりすると痒みは減りますよね?)

しかし、アトピーの人は痒みに対し敏感になっており

普通の人が痛いと感じる刺激でも、痒く感じるようなのです。

また、湿疹の部分を綿棒で軽くこするだけの刺激でも痒みが出るみたい。。。

この論文を読んだ時、2つの意味で重要な報告だと思いました。

1つ目は、アトピーの人はわずかな刺激でも痒くなるため、刺激を極力減らすことが重要である。

例えば、服装にしても、髪形にしても、体を洗う時にしても

なるべく肌に刺激のないように、工夫が必要であるということ。

2つ目は、脱軟膏がなぜ流行ってきたか解明するヒントになるという点。

綿棒の先でこする程度の刺激で痒みが出てしまう人

つまり痒み過敏が強い人は、軟膏を外用する時の刺激ですら痒みを誘発してしまうのではないでしょうか。

外来でアトピーの患者さんを診ていると、ごくわずかの人は

「何を塗っても痒くなります。」

と訴えます。

はじめは、すべての軟膏に共通する素材に対するかぶれかと考えていましたが

痒み過敏という概念を聞いてからは、外用する際の刺激が痒みを誘発する可能性もあるのではないか?と思うようになってきました。

だから脱軟膏をしなさい、ということではなくて

痒み過敏が極度に強い人の、保湿、ステロイド外用に対して何らかの工夫が必要ではないだろうか。ということです。

ステロイドは正しく使えば何も怖い薬ではありません。

また、保湿はきちんと行えば次の新しい湿疹への予防となります。

痒み過敏がそれほどではないアトピー患者さんには、現在の優しくサッと塗る外用方法で問題でしょう。

ただ一部の、痒み過敏の極度に強い患者さんには、さらに刺激の少ない外用方法の開発が必要かもしれない。

例えばスプレーでふりかけるような保湿方法とかね。

この問題は、もう少し追及したり工夫が必要だと思います。

いろいろ調べたり、考えた上でまた追加報告します。

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掻くことが癖になっている?

年甲斐もなく、高校生のお嬢さんと外来で喧嘩をしてしまいました。


いきさつはこうです。

そのお嬢さんは、なぜか下半身にしか湿疹の出ない患者さんでした。

顔も手も体も全部綺麗なのに、腰から下には湿疹が出ます。

普通、中から病気が起こっている場合、全身に万遍なくぶつぶつが出ます。

どこか一部にしか出ないぶつぶつは、外からの刺激の場合が多いのです。



「足、触る癖あるでしょ?」

と聞く僕に

「それはありません。」

と彼女。

「痒くないけど、足触っているときあるでしょ?」

と、しつこくたたみかける僕に

「絶対ありません!」

「触っているうちに痒くなって掻いちゃうことあるでしょ?」

「痒いから掻いてます!痒くないのに掻くなんてことありません!!」


これじゃあ、らちがあかないと思い

「それならば、日記をつけてごらん。3日坊主で良いから、自分が何時何分に体のどの部分を掻いたか全部書いてごらん。そして、出来たらなぜ掻き始めたか考えてごらん。」

と説得し、休戦を提案しました。


Iヶ月後の外来で、僕は高校生に勝利しました。

「どうだった?」と聞く僕に

「先生の言うとおりでした。」

と敗北宣言の彼女。

「朝イライラしているときに、足を掻いていました。特にお母さんと喧嘩すると駄目みたいです。イライラが募って足を掻いてしまいます。」

「ほらねー。」

と高校生相手に大人げない自分。


アトピーの患者さんもそうですが、痒くないけど癖で掻いてしまう「嗜癖的掻破行動」という考えがあります。

掻くことで安心する、掻くことでストレスを発散する癖が、アトピーの人にはあるという説です。

この説をアトピーの患者さんに説明すると、あまり支持されません。

「私は痒いから掻いてます。」

と怒られることが多い。

でも、ここであきらめたら僕もアトピーを治療できません。

「3日坊主、いや今日1日で良いから、自分がいつどこの部分を掻いていたかメモに取ってください。そして、掻きだしたきっかけがどんな事だったのか考えてください。」

こう言って説得し、日記をつけてもらいます。


自分の行動は実は自分が一番知らない物です。

友人が自分のものまねをして、初めて自分の口癖に気づいたりします。


アトピーの患者さんも日記をつけてみて初めて

「知らないうちに、ものすごく皮膚を触ってました。」

「いじっているうちに痒くなってしまうことがあります。」

「パソコンをいじっている間、ずっと左手をこすってました。」

なんていう自己発見があるみたいです。


こうやって気づいてもらうところから、僕はいつも治療を始めています。

まずは自分の肌を必要以上に触っている癖に気づく、そしてその癖を治すように一緒に努力する。

癖に気づくのは意外と簡単です。

誰でも気づけます。

ただ癖を治す方は難しい。時間のかかる努力です。

気長に自分に甘く(アトピーの人は完璧主義の人が多く、それがストレスだったりするので)努力してほしいと、いつも患者さんに説明しています。

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