昨日の夜、ご飯を食べながら
「余命1ヶ月の花嫁」を見てたんですね。
お恥ずかしい話
医者なのに初めてちゃんと見たんです。
「余命1ヶ月の花嫁」
それで
お医者さんの立場として色々考えてみたんです。
番組では
父親、恋人、そして友人の生の声が収録されていました。
でも、お医者さんの場面は全て再現VTRだったんですよね。
実際の主治医のお話はありませんでした。
だから
敢えて医者の立場として考えてみたんです。
癌を専門にしているお医者さんは、癌患者さんを毎日診察して、治療しています。
僕は免疫とアレルギーが専門なので、癌の患者さんはそれほど多く見る事はありません。
だから癌専門医とは感じ方が少し違うかもしれません。
それでも
まだ研修医の頃や、自分の専門がはっきりする前までは、癌患者さんの治療にあたっていました。
だから、まぁ、
素人以上、癌専門医未満の医者の意見として読んでください。
もともと僕は癌治療に携わりたかったんです。
だからはじめての研究テーマは癌を選びました。
医者になった時に専門分野を選ぶ基準も、癌の治療に関わる事が出来る科にしたいと思って、皮膚科を選んだんです。
でもね、僕は
癌を専門に出来なかったんです。
選べなかったんです。自分自身で。
僕の中に、現在の癌治療、特にステージが進んだ治療に対して迷いが出てしまったんですね。
初期の癌の多くは、手術や術後の抗がん剤で完治する事が多いと思います。
また、血液系の腫瘍は、抗がん剤でしっかり癌細胞を殺してしまえば、その後、骨髄移植を受ける事で完治する患者さんが増えました。
手術や抗がん剤は、時として悪者になってしまうこともあるんですが、それでも手術と抗がん剤のお陰で「治る癌」が出来た事も確かです。
一概に、抗がん剤はダメ、なんて言ってはいけないと思っています。
それでも、抗がん剤で治らない癌がまだあることも事実です。
副作用がどんなに強くても、わずかにでも治る可能性があるのなら、きっと抗がん剤治療を受ける患者さんは多いですよね。
僕はね、患者さんや家族の方と同じくらい真剣に、このわずかな可能性を信じる事が出来なかったんです。
信じる事が出来ないのに、副作用で苦しむ患者さんに励ましの声をかけることが
患者さんを裏切っているような、そんな気持ちになってしまったこともあります。
癌治療を専門にするには、きっと人間が未熟すぎたんですよね。
だから癌を専門に選べなかった。
経験上、治らないと感じてしまった癌患者さんに、僕は抗がん剤を使う事をためらってしまいました。
苦しくなくて、副作用もない、そんな状態を出来るだけ長く保って、自分の大事な人との時間を過ごして欲しい。
当時はそんなことを考えていました。
これはホスピスの考え方に近いと思います。
でも、これはあくまでも1つの価値観なんですよね。
苦しくたってなんだって、子供の成長を1日でも長く見届けたいからという理由で抗がん剤を選択する人もいると思うんです。
戦い抜く事を選ぶ人だっていると思うんです。
他にも、いろんな価値観で癌治療に取り組む患者さんがいると思うんです。
僕が知らないだけで。。。
僕にはまだまだ修行が必要だと思いました。
まだ医学生の頃
こんな授業がありました。
癌の末期の患者さんから
「先生、私の病気は治りますか?」
と質問された時、あなたならどう答えますか?
という医療倫理の講義。
僕らは
「はい、治ります。」
とウソをつくことや
黙って返事をしないなど
色々答えを出したんです。
でもどれも不正解。
最後、その先生が教えてくれた答えは
患者さんの手を握って「治って欲しいと思います。」
というもの。
この言葉にはウソがないから、だそうです。
医学生の僕は、なるほど、と思って覚えていました。
でもね、言葉にウソがなくとも
患者さんや家族の方と同じように、わずかな可能性を信じていなきゃ、ウソをついていることになってしまいますよね。
ウソがないように言うには、本当に患者さんのことを解ってないと出来ない事なんだな、と今更になって感じました。
病気と向き合う、命と向き合う、って生半可なことじゃ出来ないんですよね。
医学書の知識がいくら頭に入っても
難しい手術が出来るようになっても
結局、最後は人間が解らないと医療は出来ないんだと思います。
一般の人が読めば、すごく当たり前の事を書いているかもしれませんが
医者を続けていると、こういうことすら忘れてしまう時があるんですよね。
忙しくとも
「余命1ヶ月の花嫁」見て良かったです。
このブログを読んでくださる皆さんの病気が少しでも良くなりますように。
そして最後に
「余命1ヶ月の花嫁」の
長島千恵さんの冥福を心からお祈りいたします。
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